Evidence

Evidence / Two Bass Hit

2011/7/21 On Sale BS-1016 \2,500 (tax in) \2,381(tax out)

<収録曲>

1. Evidence  作曲 Thelonious Monk/編曲 秋元公彰 (4:57)

2. Take the “A”Train  作曲 Billy Strayhorn/編曲 秋元公彰 (7:49)
3. Caraçäo  作曲 内山建一/編曲 内山建一 (7:21)
4. Stolen Moments  作曲 Oliver Nelson/編曲 神尾 修 (5:37)
5. But Not For Me  作曲 George Gershwin/編曲 神尾 修 (7:09)
6. For Tom  作曲 内山建一/編曲 内山建一 (6:02)
7. Vocalise  作曲 Sergei Rachmaninov/編曲 貫田重夫 (5:41)
8. Tango-ette  作曲 内山建一/編曲 内山建一 (7:30)
9. Two Bass Hit  作曲 Dizzy Gillespie John Lewis/編曲 秋元公彰 (4:11)

Recorded:2011年2月28日・3月7日、

Mixed:4月21日 at AVACO CREATIV STUDIOS 302st、
Masterd : 2011.05.04 at T’s Factory
Producer:田中聖健・奥田英人、
Design:伊藤由佳、
Recording Engineer : 河田爲雄、
Pro Tools Operator:金子裕一・米田 聖

二本のベースが生み出す踊動的で新鮮なジャズ・サウンド。

ジャズにおけるベースという楽器はリズム楽器であると同時にメロディ楽器でもある。しかし、一人で演奏する場合は、指で絃をはじきながら、同時にアルコでメロディを奏するわけにはいかない。しかし、ベース奏者が二人いたらどうだろうか。一人がリズムを担当し、一人がメロディを奏することもできるし、二人でリズムを担当することもできれば、二人ともメロディを奏する。つまり、何倍ものヴァリエーションが可能になるのだ。一人が高音を受け持ち、一人が低音を受け持つこともでき、そのヴァリエーションは限りなき可能性を持つことになる。

この“To Bass Hit”はジャズ・ベースの可能性を限りなく追求した面白さに満ちている。聴いていて、トゥ・ベースによる重量感と躍動感には圧倒された。時にはハーモニックな旋律に酔い、時には躍動するビートにつられて、自然に身体がスイングした。

ベテランベース奏者の秋元公彰と若手のベーシスト、木村将之は息もぴったり合っている。二人とも東京芸術大学出身という共通点があるが、技巧も音楽性も抜群であり、二人が共演して生み出すジャズは無限大の広がりを持っているように思える。第一作で、こんなにも多様で広大な音楽世界を創造してくれたのには、正直びっくりした。プロデューサーの奥田英人がいうように、世界に送り出しても通用するユニークで創造的なグループだと思う。ジャズ・コンボではホーンを三本加えたりするケースはよくみられるが、二本のベースによるコンボというのは、これまで誰も思いつかなかったようだ。これも二人の優秀なベース奏者が出会ったからこそ生まれたグループだし、二人が卓越したベース奏者だからこそ生み出すことが出来たフレッシュでクリエイティブなジャズなのだ。

秋元公彰が作ったグループ“Two Bass Hit”は有名な同名のジャズ曲名からとったものと思われる。その曲は本アルバムでも演奏しているが、この曲はデイジー・ガレスピーとジョン・ルイスが共作し、1947年8月にデイジー・ガレスピー・オーケストラがRCAビクターに録音しているが、トゥ・ベース編成ではなく、ベースはレイ・ブラウン一人である。この曲名は野球の二塁打にひっかけたものかもしれない。

プロデューサーの奥田英人は「チェロの音域や倍音成分の無限大を感じさせる最低音を駆使して繰り広げる編曲の妙と即興的アイデアを材料に仕上げた」という。確かにベースという楽器は意外に広く、その音域の広さを二台のベースを用いて、存分に展開してみせたのが、このアルバムの面白さだ。予測を上廻るスリリングな展開は、まさにジャズの醍醐味であり、即興演奏の真髄を聞かせてくれるのも、このアルバムだ。

<岩浪 洋三>

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